中古住宅の契約前に必ずやるべき建物点検とは?インスペクションと現場調査のすすめ

契約前に気をつけたい「住まいの見えない落とし穴」
こんにちは。堺市美原区で地域密着でリフォーム設計施工を行っている湯本です。
今回は「中古住宅を契約する前に、点検がいかに大事か」というお話をします。
ここ数年、新築の価格は建築基準法の改正や物価高の影響でどんどん上がっています。
そのため、「新築は手が届かないから中古住宅を買ってリフォームをしよう」という方が増えてきました。
実際、私のところにも中古住宅に関するご相談が増えています。
ところが、いざ中古住宅を買うときに見落としがちなのが「契約前の点検」です。
これは、契約書に署名するのと同じくらい重要なことなんです。
なぜかというと、住まいの傷みや不具合は一見して分からないことが多いからです。
外から見てきれいに見えても、屋根裏に雨漏れの跡が残っていたり、床下に湿気で木が傷んでいたりすることがあります。
もし契約前に点検をしていなければ、住み始めてから大きな修繕費が必要になることもあるのです。
「リフォーム済みで見た目はきれいだから大丈夫だろう」と思って契約したのに、後から大きな問題が見つかってしまう…。
そうなると「せっかく安く買えたはずなのに、結果的に高くついた」ということになりかねません。
だからこそ、中古住宅を検討するときは、必ず契約前に点検をする。
この意識が安心できる住まい選びにつながります。
実際にあった中古住宅のトラブル例
中古住宅を契約後、リフォームの依頼を受けて、「契約前に点検をしていれば避けられたのに」と思うケースは少なくありません。
ここでは、実際にあった中古住宅の契約きっちり点検してわかった、または、わかったであろう事例をいくつか紹介します。
床下浸水していた家
まず一つ目は、床下が浸水していた家です。
表面上はきれいでも、床下に水がたまった跡が残っており、木材が湿気で傷んでおり、配管、配線を止めている金具、鉄の配管がサビだらけ、壁の中を通り、1階の天井にまで湿気シミが達しているお住まいがありました。
おそらく1階の壁中はカビだらけと思われます。
長く放置されるとシロアリ被害にあっている可能性もあり、水没したお住まいは何が起こるかわかりません。
雨漏りの家
二つ目は、長期的な雨漏れが続いていた家です。
屋根裏に入ってみると、屋根下地の木材がボロボロになっていました。
外から見ると屋根や天井にシミがなかったので、点検しなければ気づきにくい状態でした。
屋根に上がってみてみると、原因は雨漏れが起こって、住まわれている方自身がコーキングで補修をされたような形跡がありました。
雨漏れのコーキングにはルールがあって、コーキングしてはいけない部分があります。
それを理解せずにコーキングすると、いったん瓦の裏に入ってしまった雨水が抜けなくなります。
いったん雨漏れすると水の通り道ができて日常的な雨でも雨漏りするようになるのです。
表面上は室内にはわずかなシミがあるだけでわかりにくい状況でした。
過去に火災があった家
三つ目は、過去に小さな火災があった家です。
屋根裏に焦げ跡が残っていて、見た目には隠れていましたが、屋根の下地、壁の下地が真っ黒です。
住まわれている人は、売主様も火事の後、業者にきれいにしてもらったので、気にされていなかったようです。
木材の強度を点検してみる必要がありますが、隠れた部分は解体が必要なので点検はできないので避けるべき物件ですね。
見た目にはリフォームされてきれいなお住まいですが、購入を避けたい典型的な物件です。
これらはどれも、外から見ているだけでは気づきにくい不具合です。
基礎がひび割れた家
事例四つ目は基礎に大きなひび割れがある家もありました。
こちらは、不動産屋さんが告知して、買主さんから直せるか見てほしいということで、見に行ってきました。
建物の裏側だったので気づきにくい箇所でした。
建物の裏側まで貫通している太いひび割れ、基礎だけでなく建物にも連続してひび割れがあります。
裏には、水量のある水路がありました。
環境的に湿気が多い土地だったので、まだひび割れが進行する可能性があるお住まいでした。
費用をかければ基礎の補修補強、外壁の補修もできますが、避けるべき物件です。
これらの物件は、契約前にきちんと点検をしていれば、購入を見直すことも、修繕費を前提に予算組して、検討することもできたはずです。
点検しなかったことで気づけなかったこと
中古住宅を購入する際に点検を省いてしまうと、我々がご依頼の受けた部分の点検はリフォーム前にしますが、リフォームが始まって、その他の部分のアラが見えてくることが多々あります。
たとえば、基礎がコンクリートブロックやレンガでつくられていた家です。
地震で揺れのない状態で自立する分には問題ありません。ただ、大きな揺れに対しての生コンを流して造った基礎よりも耐震強度は低くなります。建築確認は通りませんので、増築などを事後報告で登記した場合やかなり古い物件ではまれにあり流通もしております。
また、雨漏れや漏水によって骨組みが腐り、シロアリ被害が広がっていた家もありました。
シロアリがまだいる場合は、住み始めてから床が沈むようになったり、サッシやドアの開け閉めが引っかかるようになり、ようやく異常に気づくケースもあるのです。
さらに、リフォーム済みで見た目はきれいでも、施工不良があった家もあります。
壁の中の断熱材が正しく入っていなかったり、防水処理が不十分だったりと、時間が経たなければ分からない不具合が隠れていることがあります。
そして、屋根や外壁が寿命を迎えていた家も見逃しがちです。
「まだ大丈夫だろう」と思って購入しても、数年以内に大規模な修繕が必要になることがあります。
これらはすべて、点検をしていなかったために見落とされたものです。
中古住宅は、劣化した部分があるのは当たり前です。
わかっていてリフォームの予算も分かったうえでの契約と後で気づく場合とでは大きな違いがあります。
見て見ぬふりをして契約時には気づかなかった部分が、生活し始めると、住んでから大きな費用や不安となってのしかかってきます。

リフォーム済み物件の「きれいさ」に隠れたリスク
中古住宅のなかには、リフォーム済みでとてもきれいに仕上げられているものがあります。
見た目が新築のように整っていると安心してしまいがちですが、ここに大きな落とし穴があるのです。
リフォームはあくまで「表面を整える工事」である場合も多く、過去の使用状況までは見えにくいのが実情です。
たとえば、壁紙やフローリングを張り替えてきれいにしていても、その下にある下地や構造部分が劣化していることもあります。
私は以前勤務していた会社では、中古住宅を販売前のリフォームを請け負った経験が多々あります。
売れやすくするためにすることは、
①古い住宅は今のニーズに合っていないので今のニーズに合うようにリフォームする
②汚い部分をきれいにする
①に関しては、
- キッチンの横の和室の居間を洋室にリフォームしLDKを作る
- 洗濯機置き場を屋外から室内にする
などがいい例です。
②に関しては
- カビだらけの壁紙を張り替える
- 湿気で悪くなっているフローリングを張り替える
- 結露の水滴で劣化した窓枠を外しクロス巻きで隠す
- 雨漏れした天井の雨染みがついた壁紙を張り替える
販売業者からのご依頼でこのようなリフォームを行います。
上記の例を推測すると
- 壁紙にカビが生えるお住まいは、湿気が多い、結露しやすいお住まいということがわかる
- フローリングが湿気で劣化しているお住まいは、床下が湿気が多いことがわかる
- 窓枠が劣化しているお住まいは、結露しやすいお住まいであることがわかる
雨漏りしているお住まいに関しては販売時告知義務があるのですが、雨漏れは雨が降れば常時漏れる雨漏りと春や秋のある一定方向の風雨の時のみ漏れる雨や、集中豪雨の時にのみ漏る雨漏りもあり、2年間漏らないこともあります。
そうなれば売主さんは「もう漏れていない」と思っていたり、忘れてしまっているので告知されないケースは多々あります。
しかし、風を伴った雨や集中豪雨で雨漏れする原因は解決していない状況です。
これらの要因は、リフォームしてしまうと表面上全く分からなくなります。
床下や屋根裏に入ってもわからないこともありますが、点検すればわかる場合もあるので、リフォーム済みのお住まいは意図して粗隠しをしている場合があるので、点検は必須だと思います。
契約前にできる2つのチェック方法
中古住宅を安心して購入するためには、「契約前にどれだけ確認できるか」が重要です。
ここでは、最低限行っていただきたい2つの方法を紹介します。
1. インスペクション(建物状況調査)を依頼する
インスペクションとは、有償で住宅の点検の有資格者が建物の劣化や不具合をチェックしてくれる制度です。
中古住宅を購入する際には、このインスペクションを受ける権利があります。
プロに点検してもらえるので安心材料になります。
安い買い物ではないので、素人が判断するよりも価値ある投資だと思います。
2. リフォーム費用を算出するための現場調査を行う
購入後にリフォームを予定している場合は、リフォーム業者による現場調査を依頼するのがおすすめです。
実際の建物を見て、どの部分に手を入れる必要があるか、費用がどれくらいかかるのかを具体的に算出してもらうことができます。
点検と同時にリフォーム計画の目安が立てられるので、購入後の暮らしを現実的にイメージしやすくなります。
どちらも「契約する前」に行うことが大切です。
事前に状況を把握していれば、購入の判断もしやすく、余計な出費を避けることにもつながります。
点検をお願いするならどんな業者が安心?
点検の必要性がわかっても、「どこに頼めばいいのか」と迷う方は多いと思います。
ここを間違えると、正確な調査ができずに不安が残ってしまうこともあるので、依頼先の選び方はとても大切です。
まず押さえておきたいのは、不動産業者も一応点検チェック表に基づいて点検を行っているケースも多いですが、有料のインスペクションよりは精度は低いと思われます。
インスペクションを依頼するのであれば、不動産屋さんと利害関係がない外部のインスペクション業者にあなたが直接依頼するのが安心です。
しかし、インスペクションの調査は床下や屋根裏の点検口から覗くだけです。したがって、床下全部、屋根裏全部を見られるわけではありません。
したがって、私が一番いいと思うのは、リフォームや改修を見据えているなら、対応エリアを絞って小規模でやっている、耐震や断熱、雨漏りに詳しい建築会社や工務店、リフォーム店にリフォームの見積に費用がどれぐらいかかるかと、これから起こるであろう改装工事の点検を行ってもらい、概算費用をだしてもらうのが一番いいと思います。
構造に詳しい業者であれば、単に「劣化している」だけでなく、「補修するならどう直すのが良いか」という具体的な提案と費用まで出してくれます。
過去の雨漏れや現在進行形の雨漏れ、床下の湿気の状態、蟻害の有無なども見える範囲ではありますが、最大限にお住まいの現状が把握できます。
そのうえで、保証やアフターケアの有無も確認しておくと、購入後の安心感が違ってきますし、お住まいは長期的に見て塗装や屋根、ベランダの防水など定期的なメンテや水回りの修理やリフォームも発生してきます。
なので、地域密着でやっているところは、適当なことをすれば自分のところにしっぺ返しが来るので、きっちり真剣に点検見積をしてくれるところが多いかと思います。
また、私の感覚ですが、地域密着型の小さい会社がいいのではないかと思います。
地域密着でやっていない時代があった私は、儲かりそうな仕事は少し遠方でも仕事をしておりました。
また、リフォームは検査がありません。したがって、仕上げ部分はお客様が判断できますが、構造部分、床下、壁中などは「ここまでやっていればオッケー」を決めるのは業者の一存にかかってきます。
大手は利益に走りがちです。そうなるといいリフォームをしたい、よりも少しでも安く工事を仕上げるに偏りがちです。
だから、構造に強い、地域密着のあまり規模の大きくないリフォームをやってくれる会社がいいのではないかと思います。
要するに、点検を依頼する相手は「第三者として冷静に判断できる立場」と「住まいの専門知識を持っていること」「将来的も長い付き合いを望んでいるところ」が条件になります。
この3つを満たす業者を選ぶことが、安心して中古住宅を購入するための鍵になります。

後悔しない中古住宅購入のために大切なこと
中古住宅は、新築よりも金銭的に手が届きやすく、リフォーム次第で理想の住まいに近づける魅力があります。
しかし、契約前の点検を省いてしまうと、思わぬ不具合や修繕費に直面し、せっかくの購入が後悔につながることもあります。
ここまでお話ししてきたように、表面的な美しさや、立地のすばらしさに惑わされることなく、床下や屋根裏、基礎といった「普段は見えない部分」にこそリスクが潜んでいることを理解して中古住宅選びを進めていただけたら、住宅選びが成功に近づきます。
だからこそ、最低限インスペクションを行い、リフォームを前提とした現場調査を活用し、専門家の目で建物を確認しておくことが非常に大切です。
点検は、契約書に署名するのと同じくらい大切な工程です。
事前に状況を知っておけば、「安心して契約する」「購入を見送る」「修繕を前提に進める」など、判断を自分でコントロールできます。
後悔しない中古住宅購入のために大切なのは、信頼できる専門家と二人三脚で一緒に確かめ選ぶこと。
この一手間が、長く安心して暮らせる住まい選びにつながります。