私なら、こんな中古住宅を選ばない ~建物調査士の体験談~
~選んではいけない中古物件のチェックポイント~

中古住宅を探していると、「希望のエリア」「なんかきれい」「この家、安くて良さそう」などと思い前向きに話を進めていくことになると思います。
良い物と出会って、喜んでいる方に水を差すようで申し訳ないのですが、長年建物を見てきた立場から言うと、立地、安い、エリア、デザイン、きれい!と目を引くものがある物件は注意が必要なケースが少なくありません。
目を引く部分をプラス材料として、総合点は合格!となりがちです。
しかし、上記の好条件は建物の良し悪しや性能と無関係です。
大半の中古住宅は仲介物件です。売りたい人から買いたい人につなげるのが不動産業者の仕事ですから、不動産仲介業者が建てた家でもないし、建築されてから数十年経過しているのですから、保証を付けることはできません。
そして、建築されてから数十年使用し、風雨や紫外線にさらされているわけですから、見えない部分に不良個所が存在する可能性を秘めています。
この記事では、数多くの中古住宅を調査し、リフォーム行ってきた経験から、「私なら選ばない中古住宅」の特徴を、土地・建物・メンテナンスの観点から具体的にお話しします。
購入後に後悔しないために、契約前にどんなポイントを見ておくべきか。
中古住宅選びの落とし穴を避けるための実践的な視点をお伝えします。
1.中古住宅は“現状渡し”が原則。不良部は直せるけど超高額な場合も・・・
中古住宅は、「少し古くてもリフォームすればいい、ダメな部分は直せばいいから」と考え購入する方が多いかと思います。
しかし、長年この仕事をしている私から見ると、「直せばいい」「リフォームすれば何とかなる」とは限らない中古住宅も混じっているので注意が必要です。
そもそも中古物件は現状渡し・保証なしが原則です。
つまり、購入したあとに設備の不具合や建物の不具合が見つかっても、売主が修理してくれるわけではありません。
さらっと、悪条件を告知されて、その上で契約してしまえば買主であるあなたが修理する必要があります。
たとえば、床下が湿気が多かったり、基礎や外壁にひび割れがあったり。
その時点では目に見えなくても、内部の木材が腐っていたり、シロアリが侵入していたという事例は何度も見てきました。
修繕ができる範囲ならまだしも、直すために想像以上の費用がかかるケースや、そもそも直せない不良個所を抱えた家も存在します。
中古住宅の魅力は、好立地にポツンと空きがあったり、新築に比べ低価格であること。
危険なのは、そこばかりに目が留まり、いい物件と思える物件ほど、「差し引きして多少悪くてもいいでしょう。」という、多少不具合があってもカバーきるというプラス思考に陥る可能性があります。
しかし、「修繕でき、費用も払える範囲」と「修繕はできるが相当費用が掛かる」「修繕はできない」という場合もあるので、差引できない現実的な線引きが必要です。
購入前に、少なくとも建物の健康状態を正確に知ることが、後悔しない第一歩だと思います。
中古住宅選びは、見た目の印象や立地、価格だけで決めず、“どこは簡単に直せて、どこは手を出せないか”見極める必要があります。

雨漏れしても建物内に漏れない構造なので売主も気づいていないケースもあります
2.この立地条件、私は避けます
中古住宅を選ぶとき、建物の状態に加えて、土地の条件も”直せない不具合”です。
どんなにしっかりした構造の家でも、土地の性質や環境が悪ければ、長い年月のあいだに建物に悪影響を及ぼし、湿気に悩まされたり、ひどい場合は傾きが徐々に進みます。
私がまず確認するのは、「周りに水があるか」と「地盤の安定」です。たとえば、家の裏や側面に水路がある土地。
一見、水路や池は、風情があるように見えても、湿気の影響を受けたり、地盤がゆるみやすい場所も多いのです。
地盤が弱いと、不動沈下(家が部分的に沈む現象)が起こり、軽度の場合は基礎や建物にひびが入ったりします。やがて、ドアや窓の開閉がしづらくなる、傾くなどという症状になって表れます。
反対に構造には問題ない、髪の毛よりも細いひび割れなどもありますので、ひび割れは100%ではないので見極めが必要です。
また、家が建って数十年経っているのにひび割れがほとんどない土地は、沈んでいない強固な土地ということを年月が証明してくれていることにもなります。
次に気をつけたいのが、傾斜地や盛り土・切土の土地です。
分譲地の造成時に「盛り土(人工的に土を盛った土地)」である場合、見た目ではわからなくても、時間がたつと沈下が進むケースがあります。
また、山の裾や河川の近くにある土地も要注意です。
ハザードマップで土砂災害・洪水のリスクを確認すると、予想以上に危険エリアに入っている場合があります。
「この家は災害にあったことがないから大丈夫!」と言われても、近年の豪雨や地形の変化を考えると、過去の経験だけでは判断できません。
また、ハザードマップエリアの中古住宅の場合、リフォームの補助金の中にはもらえないものもあります。
もう一つ見落とされがちなのが、高い擁壁の上に建つ家です。
見晴らしがよく、風通しもいいという利点はありますが、擁壁の材質や構造が古い場合、建て替えの際に擁壁を作り直す必要が出ることがあります。
その費用は驚くほど高額で、せっかくの土地の価値を下げてしまうことも。
さらに、擁壁上の家は駐車場の増設が難しく、階段の上り下りが将来的に負担になる点も見逃せません。
こうした立地条件は、一見すると魅力的でも、暮らしやすさや建て替え、転売面で大きな差が出ます。
中古住宅を選ぶ際は、建物だけでなく、土地が本当に“安心して住める場所”かを見極めることも大切です。

3.土地の性質が家の寿命を左右する
家の寿命を決めるのは、実は建物そのものよりも「土地の性質」だと思います。
どんなに丈夫な構造で建てられていても、湿気の多い土地や水はけの悪い地盤では、家が早く傷んでしまうことがあるからです。
現場でよく見るのが、床下が常に湿っている家です。
原因は地面の性質や地下水の流れなどさまざまですが、湿気が抜けないと木材が腐り、シロアリを呼び込みます。
防湿工事や換気改善で対処可能ですが、土地そのものが湿っている場合は、改善にかなりの費用がかかることもあります。
床下にカビが発生していたり、備長炭や防湿材、石灰などを撒いて床下に湿気対策をしているお住まいは、床下の湿度や床下の木材の含水率(水分含有量)などの調査が必要だと思います。
また、駐車スペースが1台分しかない土地も、将来的な暮らし方を考えると気をつけたいポイントです。
古い家は駐車スペースが1台が前提の設計が多く、いざ2台に増やそうと思っても、庭や玄関ポーチを壊して大掛かりな工事が必要になる場合があります。
場合によっては擁壁の一部を削る必要があり、想像以上の費用になることも少なくありません。
周辺道路が傾斜地で、高低差や段差の多い土地も将来の想像をして判断する必要があります。
駐車スペースを作りにくかったり、若いうちは問題なくても、年齢を重ねたときに階段を上って玄関へ行くのがつらくなる、という声をよく聞きます。
見晴らしがよく、通行人に覗かれることがなくていいのですが、将来を見据えるなら、バリアフリー化がしやすいできるだけ平坦な敷地を選ぶほうが安心であり、売りやすい土地です。
土地の性質は、購入後に変えられない部分です。
湿気、排水、地盤の強さ、駐車スペース――これらを軽視すると、後になって失敗に気づくことになったり、不満や不安を抱えたまま生活することになります。
中古住宅を選ぶときは、“建物を支える土地”の環境と性格にも、しっかり観察と検証をする必要があります。
4.建物の“見えない老化”をどう見抜くか
中古住宅を見学するとき、多くの方が「見た目がきれいだから大丈夫」と感じるものです。
しかし、見た目とは裏腹に見えない部分に老化が潜んでいる場合も多々あります。
私たち専門業者が点検でチェックするのは、外からは気づきにくい「劣化のサイン」です。
まず注意したいのが、基礎の高さです。
昔の家の中には、基礎が地面から30cm未満しかないものが少なくありません。
このような家は、床下の配線・配管やシロアリ防除などのメンテナンスが物理的に困難です。
そして、地面から床までの距離が近いので、の湿気を受けやすく、木部が知らないうちに傷んでいるケースもあります。
このようなデメリットがあるので、お住まいの長寿化が難しい建物となるので、中古住宅の補助金である長期優良住宅に認定を受けることができません。
次に、外壁の状態。
小さなひび割れが多い、表面がふくらんでいる――これは、外壁の下地や柱にまで水分が回っている可能性を示しています。
長年メンテナンスをしていないと、内部の木材が腐っていたり、シロアリの被害を受けていることもあります。
外壁塗装の「道路からの見た目のきれいさ」だけで判断するのは危険です。北面や隣地との狭いにも注目する必要があります。
さらに、壁紙に小さな穴やぷつぷつした跡がある家も要注意です。
一見すると画鋲の跡のように見えますが、実はシロアリが外壁を食い進めているサインのことがあります。
シロアリが壁の中の木部を喰い進んで、壁紙を破って光が見えたので、元の壁の中に戻るを繰り返した痕跡の場合があります。
そして、「家が傾いているか」を判断する方法についても誤解が多いところです。
「ビー玉を転がして確認する」とよく言われますが、これは信頼できる方法ではありません。
2~3mmの傾きは木の痩せなどの許容範囲でこれでもビー玉は転がるので、ビー玉テストで物件の良し悪しを決めていると、中古住宅は買えなくなります。
本当に確かめたい場合は、リフォームしてもらう業者や調査機関にレーザーで水平を測ってもらうのが確実です。
外から見えない老化は、経験を積んだ人の目でないと見抜けないことが多いものですが、
中古住宅を購入する前に、こうした“建物の声”を正確に聞き取ることが、安心して暮らすための第一歩だと思います。
5.「補修すれば大丈夫」が通じないケース
中古住宅の相談を受けていると、「多少傷んでいても、直せば大丈夫ですよね?」という言葉をよく聞きます。
しかし、実際の現場では、“補修ではなく、大規模な改修” が必要なケースもあります。
外から見える傷みよりも、内部で進行している劣化のほうが深刻なことがあるのです。
① 基礎や床下に大きなひび割れがある家
これは単なる表面の亀裂ではなく、地盤の不動沈下によって建物が傾き始めている可能性があります。
いったん沈み始めた地盤は、自然に止まるとは限りません。
「止まっているように見える」だけで、少しずつ進行している場合もあります。
補修でひび割れは埋めることは可能ですが、進行している場合は、同様の症状がまた現れるので、緩和するには、基礎補強など高額な工事が必要になることがあります。
② シロアリ被害がある家
床下全面点検で被害跡が見つかった場合でも、実際の被害の範囲は解体してみなければ分かりません。
外から見える範囲は一部でも、土台、柱、梁まで広範囲にわたりで食われていたという例も見ました。
骨組み部分に蟻害があると、建物が傾いたり、耐震強度に影響が出る場合もあります。
そして、骨組みである土台、柱、梁を補修するとなると、相当な費用が掛かる場合もあります。

③ 陸屋根(平らな屋根)や大きなベランダがある住宅
「大きなベランダでバーベキューができる」「デザインがシンプルでいい!」と思われて契約された後悔の例ですが、陸屋根はメンテナンスに非常に費用がかかるということに住み始めてから気づかれました。
表面は瓦と異なり、一般的な住宅は防水層で雨水から守られています。
この防水層は約10年に一度はメンテナンスが必要です。瓦に比較して格段にメンテナンス時期が短いのが弱点です。
そして、平らな面でが雨風を受ける構造は、屋根瓦に比較して、雨水が表面に乗っている時間が長いので、メンテナンス時期を過ぎると、瓦よりもはるかに雨漏れがしやすいのも特徴です。
このように、メンテナンス費用が頻繁にかかり、油断をすると雨漏れしやすいので、平らな屋根を傾斜のある普通の家の屋根にリフォームしているお住まいもあるくらいです。
このような物件は、長期的にかかる維持費が格段に高いということを理解して、物件を決定することが必要です。
④ モルタル外壁の上にサイディングを重ね張りした家
一見きれいにリフォームされているようでも、元の外壁がボロボロで、それを隠すために外壁材を上張りしている場合もあります。
中の状態が確認できないため、内部に湿気が回っていても分からず、知らないうちに腐食が進むリスクがあります。
費用を掛ければ、ほとんどの不良部分は直せる、直せなくても改善はできます。
このケースは、費用が莫大にかかる可能性を秘めた物件ですので見極めが必要です。
⑤ リフォーム済みのお住まい
リフォームをきれいに行ってくれており、すぐにでも住めそうな物件は非常に魅力的です。
しかし、私たち業者側からすれば、悪いところを隠すためにリフォームした場合も多々見てきているので、リフォーム済みの物件は避けると思います。
湿気が多くカビがある、雨漏れ後、水漏れ後、シロアリ害、床の傾きを表面だけ直す、など悪い痕跡はなくなる方が物件は売りやすいですね。
そのリフォーム費用は物件に上乗せられます。
粗隠し費用、自分で選んでいないフローリングや壁紙、水回り機器にお金を払うのはもったいない気がしますし、痕跡がないので将来どうなるかがわからないので不安になります。
6.リフォームを前提に買う場合の重要ポイント
中古住宅を買って、ご家族の好みや暮らしに合わせてリフォームする。
新築に比較して、物件を安く購入してリフォームすることは、新築価格が高騰している昨今、このように考える人がどんどん増えています。
欧米ではほとんどがこのような考えで住まいを購入する方が圧倒的に多いようです。
ただし、その場合は、”どの家を選ぶかの段階で、理想のお住まいにリフォームする費用も含めた検討”が大切です。
まず押さえておきたいのは、耐震基準の違いです。
1981年(昭和56年)と2000年に耐震の基準が更新されております。
2000年以降の基準では耐震等級1”一応倒壊しない”という強度でないと建築できないという法基準で建てられた物件なので間取り変更や窓の新設、太陽光発電の後付けによる重量加算などを行っていなければ、耐震に関しては安心であるといえます。
もし「なるべくリフォーム費用を抑えたい」「耐震補強までは考えていない」という場合は、1981年以降の建物を選ぶことが安心の目安になります。
1981年以降の建物は、壁の量が2000年基準と同じなので、耐震補強工事をするにしても費用は抑えられます。
1981年以前の建築物は、がっちり耐震補強工事を行う必要があると認識しておいてください。
購入するなら、補助金も出ますので、必ず専門家に耐震診断を依頼し、補強費用を含めて総額を検討しておきましょう。
次に重要なのは、中立的な立場の人にリフォームの見積もりを依頼することです。
不動産会社は売買の仲介が仕事ですから、建物の欠点に深く踏み込むことは多くありません。
そこで、不動産会社とは利害関係のない工務店や設計事務所に、購入前の段階で見積もりを依頼してみてください。
実際に工事を行う立場の目線で、どこに費用がかかりそうか、どの部分は後回しにできるかを具体的に教えてくれます。
建物調査でインスペクション建物調査士の調査という方法もあります。
しかし、インスペクション何もやらないよりはいいですが、リフォームを行う業者よりも調査があまい場合もあるので注意が必要です。
例えば、床や天井裏の点検ですが、インスペクション調査では、覗くだけで判断します。雨漏れ箇所やシロアリ害の痕跡は見つけるのは難しいと思います。
また、今回すぐには行わないリフォームも、将来的に考えておくことが大切ですので、設計や工務店などの業者の方がいいと思える点です。
たとえば屋根や外壁の塗り替え、水回りの更新――これらはすぐに必要でなくても、10年後、20年後には避けられません。
あらかじめ将来の工事費も見込んでおくことで、「買ったあとに思ったよりお金がかかる」という失敗を防げます。
リフォーム前提の中古住宅選びは、“今の暮らし”と“これからの暮らし”の両方を見据えることが鍵です。
建物の状態を正しく把握し、将来のメンテナンス計画まで含めて考える。
それができれば、古い家でも長く快適に住み続けることができます。

7.“いい物件”に見える時こそ冷静な目を
物件探しをしているといづれは「いい物件を見つけた」「これなら問題ないだろう」と思える物件出会います。
しかし、中古物件をリフォームしたお客様のお住まいのメンテナンスを長年行ってきたから立場から言うと、“いい物件に出会えた”と感動したときこそ、第三者に建物を見てもらい冷静な検査をしてもらう”ことが重要だと思います。
安い場合はなぜ安いのか?
売主はなぜこんないい物件を売るのか?
いい物件なのでなぜ壁紙を張替え、キッチンまでリフォームして売ってくれるのか?
魅力ある物件でも、外からは分からない問題を抱えていることがあります。
地盤、湿気変更できない条件、メンテに費用が掛かる、修理やリフォームに莫大な費用が掛かるなど。購入後に想定外のことが起こり、だれも後悔したくはないと思います。
だからこそ、安さに惹かれたときほど、一歩引いて冷静に見る目が大切です。
私自身、これまで多くの中古住宅を点検してきましたが、専門家による調査を行った家ほど、購入後の満足度が高いと感じます。
不安な点を事前に知っておけば、直すべき箇所を計画的にリフォームでき、余計な出費を防ぐことができます。
中古住宅は「安く買う」ことより、「安心して住める」ことが何より大切です。
部分的な魅力に惑わされず、建物と土地の状態を冷静に見極めること。
それが、長く住み継げる家と出会うための、いちばん確実な方法だと思います。













