収納と動線で暮らしが変わる!狭小住宅を生まれ変わらせた間取り変更の例

狭小住宅でも「快適」はつくれる
都市部に多い、細長い間取りの住宅。
「狭い」「古い」「使いにくい」と感じていても、工夫しだいで快適な住まいに生まれ変わります。
今回は、そんな狭小住宅で姉妹ふたりが快適に暮らすための間取り変更と収納の工夫を紹介します。
Before|古い間取りに感じた「不便」な点
この住宅は2階建てで、4部屋+狭いキッチンの間取りです。
1階には和室と洋室、そして水回りが配置されていました。
キッチンは脱衣室と兼用、洗濯機は屋外にあり、使いづらい生活動線が課題でした。
また、小さな窓しかなく、特に中央の部屋は自然光が届かず昼間でも薄暗い状態が続いていました。
さらに、備え付け収納が少ないため、タンスや棚を置かざるを得ず、スペースがさらに狭くなっていました。

プランニングのポイント|限られた空間をどう活かすか?
リフォームの目的は、「ふたりが安心して、心地よく暮らせる住まい」。
そのためには限られた予算内で最大限の効果を出すことが求められました。
予算は800万円。
階段の移設といった大がかりな構造変更は見送り、1階中心の工事に集中することで費用を抑えました。
2階部分については構造に手を加えず、内装のリフォームのみにとどめ、全体のバランスを見ながらコストを調整しています。
間取りは大きく変えず、生活空間に重点を置いた設計に。
部屋と部屋の仕切りを減らし、できるだけ開放感を保ちながらも、耐震上必要な間仕切りは残すというのが今回の「おおまかな設計」のポイントとなりました。


1階をワンルーム風に再構成|開放感と機能性の両立
リフォーム後の1階は、キッチン・ダイニング・リビングをつなげた“ワンルーム風”の間取りに生まれ変わりました。
中央にあった廊下の壁を一部撤去し、空間に自然なつながりを持たせることで広さを演出。
洗面・浴室・トイレ以外のドアをなくしたことで、風通しと見通しがよく、狭さを感じにくい、動きやすい空間となりました。
また、キッチンはロールスクリーンで仕切れるようにしており、来客時でも安心して迎えられる工夫がされています。
独立型キッチンの工夫とコンパクト収納設計
キッチンは既存の洋室4.5帖に移設し、幅1950mmの小型キッチンを採用しました。
限られたスペースながら、レンジや炊飯器といった調理家電の置き場所、そして食器棚スペースまでをきちんと確保しています。
中型冷蔵庫にも対応し、調理導線がスムーズになるよう設計。
さらに、ロールスクリーンを設置することで、使わないときは生活感を隠すことができるため、暮らしの快適さを保てる工夫がされています。

収納改革|家具を置かない住まいに必要な工夫
収納については、「家具を使わない暮らし」をテーマにしました。
収納は1階に4か所配置し、それぞれの用途に合わせて、衣類、日用品、食品のストックなどを収納できるように分けました。
収納は動線上に配置されているため、必要なものを取り出しやすく、使い勝手も抜群です。
玄関収納はあえて作り付けにはせず、既製品を置くスタイルとし、後から自由に入れ替えができる柔軟性も持たせました。
水回り再編|集約して動線を短縮
キッチン以外の水回りは、洗面脱衣室、浴室、トイレをまとめ、洗濯機を室内に置き、移動がスムーズになり、家事効率もアップ。
欧米のように洗面ドアだけでトイレドアなしも可能ですが、リビングが隣接しているため、音やにおいの対策としてドアを設置。
快適性とプライバシーのバランスを取りました。
また、もともとの小窓を移動し、幅75cmの鏡付き洗面台がぴったり収まるように設計された点も、工夫のひとつです。

暮らしやすさUPの細かい工夫
日々の快適さは、こうした細部の積み重ねにかかっています。
テレビを壁付けできるよう、中央の壁面には補強を加えました。
これにより空間がすっきりとし、掃除や模様替えも楽になります。
また、大型テレビへの買い替えにも対応できるように壁全体を補強しているので、将来の安心感も得られます。
以前は小窓ひとつだけだったリビング部分には、幅のある腰窓を新たに設置し、自然光がたっぷり入る明るい空間に生まれ変わりました。
屋外空間のプチ活用|勝手口+ウッドデッキの使い方
屋外にも手を加えることで、より実用的な暮らしを実現しています。
勝手口の外には屋根付きのウッドデッキを設置し、雨の日でも安心して洗濯物が干せるスペースを確保。
一時的なごみ置き場や物の仮置きなど、多目的に使える裏動線もできました。
家の中だけでなく、外とのつながりも大切にした設計です。
断熱・耐震・補助金の活用で賢くリフォーム
暮らしの快適さと安心を支えるために、断熱と耐震補強も同時に行いました。
壁・床・窓まわりの断熱性能を向上させ、寒さにも対応。
また、構造の補強を加えることで地震への備えも万全にしました。
補助金制度も積極的に活用し、自己負担を抑えながら必要な改修を行っています。
800万円台の予算内で、ここまで対応できたのは、無理のない計画と補助金の有効活用によるものです。
安心安全なリフォームを実現するために|耐震性を損なわないために大切なこと
間取り変更や、窓の位置・大きさの変更によって、耐震強度が弱くなってしまう場合があります。
これは目に見えない部分で起こるため、特に注意が必要です。
そのため、必要な壁の量や、バランスのとれた耐震壁の配置、適切な耐震壁の作り方や補強方法を十分に検討することが大切です。
そして、完成後の耐震強度をきちんと算出し、お客様に提示したうえで、安心・安全な住まいであることを確認してからリフォームに取り掛かること。
これが、私たち建築業者の責任だと考えています。
大きな地震が起きなければ表面化しない問題であるため、残念ながらこうしたリスクに配慮していない業者も少なくありません。
だからこそ、構造部分に関わるリフォームでは、規模の大小にかかわらず、耐震に対する理解と対応が非常に重要になります。
狭小住宅リフォームで後悔しないために
まずはご自身の暮らしにとって何が大切か、優先順位を明確にすることが重要です。
収納、動線、採光など、住まいに求める要素は人それぞれ。
既存を活かすことに視点を置いた改修の方が、予算を抑えらえ、結果的に満足度は高くなります。
そして、細かな相談ができる地元の業者と手を組むことが、理想の住まいを叶える鍵になります。
住まいのリフォームは、人生の快適さに直結する大きな一歩です。
今後の住まいづくりの参考にしていただければ幸いです。